パーソナルトレーナーとして活動していて、たくさんの身体を見てきた私だからこそ言える、現場単位でリアルな初心者がやりがちなNG行為を紹介します。
もくじ
身体が動いていないままトレーニングをする

はじめにお伝えしたいのは、ほとんどの人が「身体が動いていない」ということです。
筋トレをはじめる初心者のほとんどが、可動域に制限がかかっているという状態です。
例えば、腕がきちんと頭の上まで上がらない状態では、正しいショルダープレスはできません。
しかし、実際にそのような身体に制限がかかっている状態のままショルダープレスをやろうとしている人がいます。
また、初心者のほとんどの人が胸を張ってアーチが組めずに、基本種目のベンチプレスがそもそもできない状態です。
その状態でトレーニングをしても怪我をするだけなので、できない原因を探る必要があります。
なぜそのフォームがつくれないのか、どこに制限がかかっているのかというところを見つけて、それを改善するエクササイズ・ストレッチ・ケアをすることから始めましょう。
トレーニング界隈では、ストレッチはしない方がいいという話が広まっていますが、それはトッププロレベルの話なので、怪我防止の観点から見て、初心者の方はストレッチをして可動域を出してからトレーニングをした方がいいです。
代償運動の危険性

また、トレーニングは自分の意思で肩甲骨のコントロール(寄せたり広げたり下げたり上げたり)をする必要があるのですが、はじめのうちはそれができない方がほとんどです。
すると、正しいフォームがつくれない、トレーニングの途中でフォームが崩れてしまうことで、動いてはいけない方向へ動いてしまったりするわけです。
それによって、「代償運動」という問題に繋がります。
代償運動とは、前屈を例にあげると、前屈はハムストリングをターゲットに伸ばす運動ですが、ハムストリングが固い人は腰椎を丸めることで、見せかけ上できているように見えます。
つまり、本来動くべきところではない違う部位を無理やり動かして補うということです。
代償運動の危ないところは、自分の身体が正しく動いていないことに気がつかないということです。
例えば、肩を痛めてしまう人は、肩甲骨を寄せられていないため肩関節が必要以上に動いてしまうことが原因だったりします。
腕を上げる動作も、肩甲骨を後ろへ倒すことで頭の上まで上がりますが、肩甲骨が動かないと引っかかって上がらずに、代償運動で上腕骨が動きすぎて肩を痛めてしまったりします。
つまり、痛めた部位に直接の原因があるのではなく、それを支えている骨や筋肉に原因がある場合があるということです。(ケースバイケースですが)
インナーマッスルに着目

筋トレをしていると大きな筋肉の大胸筋や広背筋などに目が行きがちですが、その下にあるインナーマッスルの小胸筋や肋骨の上に乗っている前鋸筋、肩甲骨の動きをつかさどるローテーターカフなどを覚えていくと、トレーニングの質が上がります。
自分が指導する場合は、アトラスというアプリで、小胸筋などのインナーマッスルを実際に見てもらってケアの仕方を教えます。
筋肉について知識を身につけることで、動きを見て適切な運動かを判断できたり、正解が分かることで、不必要な種目をやらなくて済むようになります。
身体が動かない原因を探るときは、1つ1つのインナーマッスルの動きを考えるようにしましょう。
理学療法士や柔道整復師の方の発信からヒントを得ることもおすすめです。
身体が動いていない状態でテクニックを覚えても、再現できる身体を持っていないので意味がありません。
なので初心者の場合、マイナスの状態にある身体をまずは0に戻してあげるというのが一番最初にやるべきことです。
トレーニングの本質は身体を動くようにすることなので、身体を壊すような負担のかかる動作はやるべきではありません。
感覚では分からない関節への負担に着目

意外と気がついていないのが、「関節への負担」です。
「感覚」で効いているつもりでトレーニングをやっていると、関節への負担による痛みを効いていると勘違いしてしまうことで怪我をしてしまうのです。
例えば、小指側を上にあげるサイドレイズもそのひとつです。
実際にやってみると分かると思いますが、親指を上にした状態でのサイドレイズは頭の上まであがりますが、小指を上にした状態では身体の横で止まります。
なぜかというと、棘上筋というローテーターカフのひとつが肩関節に挟まり、引っかかって動かなくなるためです。
そこへ重いダンベルを持って負荷を与えると、強く挟んで痛めてしまいます。
この痛みを効いていると勘違いしているうちに、いつか怪我をしてしまいます。
なので、サイドレイズは、親指を上にした方が肩関節にとっては安全ということになります。(アップライトロウも同様)
それを感覚でやっていると痛みを効いていると勘違いしてしまって、いつまでも間違えたまま怪我のリスクが高まるということです。
基本的にプレス系の動作は、親指を内側にした内旋状態では負担がかかります。
なので、ジムのマシンなどもプレス系のマシンは親指を外側にした外旋状態でつくられていると思います。
例えば、ペックフライなどのマシンは開いた外旋状態のものが多いです。
それは、身体構造を考えて身体に対して優しい作りになっているからです。
ベンチプレスは初心者には向かない

真っ直ぐの棒に対して、自分の身体を合わせる必要があるベンチプレスは、初心者が最初にやる種目としては適していません。
ベンチプレスは親指を内側にした真っ直ぐな状態でやりますが、柔軟性があって身体がしっかり動く人でないと、上手くできない種目になります。
なので、基本的には自分の加減で手を開けるダンベルプレスもしくはダンベルフライをおすすめします。
以上のように、怪我をせずに適切なトレーニングをやっていく場合は、インナーマッスルなどの知識が必要不可欠なのです。
肩関節が動く種目はハイリスク

肩関節が動く種目はリスクが大きいので、感覚だけでなく正しい知識を持って取り組む必要があります。
例えば、バックプレスやラットプルダウンなどは、本来腕は頭の上までしか上がらないところをその可動域を超えたところで動作しています。
バックプレスをやっている人は肩が発達している人が多いですが、それはバックプレスをやっているから筋肉が大きくなったのではなく、バックプレスをできる柔らかい肩関節を持っているから大きくなったというのが正しいと考えられます。
なので、一般の人が真似をすると、怪我をしてしまうので基本的には避けるべきです。
ディップスで肩が痛いという人も、関節の可動域を超えている場合がほとんどです。
重りを持ったり負荷をかけることで、本来行かないはずの可動域を超えてしまうので、動作には注意が必要です。
トレーニングは継続できることが何よりも大切です。
怪我をするとやる気も筋肉も落ちてしまうので、ジグザグの成長曲線よりも右肩上がりの成長曲線が望ましいです。
種目の順番も大切

一般的なセオリーだと、高重量を扱える多関節のコンパウンド種目をはじめに持ってくることが多いですが、それだと怪我のリスクが大きいです。
そのため、予備疲労や事前疲労工程の収縮種目からトレーニングを開始して、2種目目以降は重量を扱えないようにしてから対象筋を狙っていきます。
年齢によってもトレーニングを考えなければならないので、人それぞれ自分に合わせて種目を考える必要があります。
パーソナルトレーニングの本質

みなさんがパーソナルトレーナーに期待することは、スーパーセットやジャイアントセットで追い込まれることや、誰も知らないグリップの握り方の裏技テクニックなどを教えてもらうことだと思いますが、本質は「いかに基本的な動作ができているか、いかに基本が抑えられるか」ということです。
例えば、POFや起始停止を理解できているかなどです。
ただ追い込むだけのその場限りのトレーニングをしても仕方がないので、自分が見ていない時間のトレーニングの質を上げるようなサポートが望ましいです。
身体の動かし方の練習方法

動かない身体ということは、これから動くようになっていく伸びしろがあるということです。
身体が動くようになると、同じトレーニングを行っても効率がまったく変わります。
例えば、スクワットをするときには、ヒップヒンジといってお尻を引く動作の練習から始めましょう。
そうすることで、ベントオーバーローなどにも派生してできる種目が増えていきます。
基本種目は、基本といわれるだけの意味があります。
例えばベントオーバーローの場合、ヒップヒンジでお尻を引く動きでお尻や太ももにテンションをかけることや、体幹を意識して背中を一直線にすることで基本となる目的の筋肉への意識を覚えるための種目だと考えます。
なので、基本をおそろかにしてベントオーバーローをやらない人はお尻や太もも、体幹も弱くなり、どこかで伸び悩みます。
マシンかフリーウェイトか

マシンは、可動域に制限のある人が基本種目の代替として取り入れるには良いものです。
ただし、フリーウェイトで自分の身体の使い方を覚える練習をすることは必要です。
はじめから上手くベンチプレスができる人はいないので、反復練習で試行錯誤していく過程を大切にしていきましょう。
まとめ

情報が溢れる中で、つまらない情報はどれだけ大切でも広まらないものですが、今回お伝えしたかったのは、「健康のために身体を動くようにする重要性」です。
在宅時間が増えて、腰が痛い人も多いと思いますが、そのままでは何十年後かに腰が曲がったおじいちゃんおばあちゃんになってしまいます。
だから、トレーニングの第一歩としてストレッチやケアをしましょう。
改めて、可動域や柔軟性の重要性に気づいてもらえたら幸いです。
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